新病院建設

新病院建設にあたり

新病院建設にあたり

 桐生厚生総合病院(以下「当院」という)は、昭和9(1934)年に「桐生組合病院」として病床数20床で開設し、現在は桐生地域医療企業団が管理運営する公立病院で、80年以上の歴史を誇る地域中核病院であります。
 そして、地域医療支援病院、地域がん診療連携拠点病院、地域周産期母子医療センター、災害拠点病院、臨床研修病院などの承認や指定を受け、教育医療機関としては、数多くの学会などの研修病院あるいは指導施設として認可されております。標榜診療科は25科で、一般病床429床、感染症病床4床を有しており、数多くの最先端医療装置が稼働し、高度かつ先進的な医療を提供して、総合的医療機能を持つ急性期病院としての役割を担っています。
 しかしながら当院の病棟は昭和63(1988)年建設で35年目を迎え、施設の老朽化と共に時代の進歩にそぐわない部分が現れるようになりました。患者さんにとって望まれる医療環境の中でより良い医療の提供を続けていくためには、施設の抜本的な再整備が必要な状況になりつつあります。また近年増加している豪雨災害に対する対策整備や新興感染症等の感染拡大時の対応に必要な機能を備えておく必要がありますが、病院の構造的な問題により万全な対応に至らない現況があります。病院は医療提供の場として、24時間365日使い続けることで劣化が非常に早いため、政府の定める病院の法定耐用年数は39年とされています。市民の命と健康を守るという観点から、施設の老朽化により患者さんに不測の事態が発生する前に、安心安全な医療を提供できる病院での診療体制を確保していただきたいと考えております。
 一方、当院の経営状況は、平成28(2016)年度以降大幅な医師減少の影響により急激に収益が減少して大幅な赤字となりましたが、令和元(2019)年度から改革に取り組み、コロナ禍における経営改善の結果、安定した均衡財政が整いつつあります。そこで新規医師の確保ならびに臨床研修医の増員を図るとともに、持続的な医療提供体制の構築を目指して、病院の建替えに向けて踏み出す運びになりました。
 新病院建設を準備するには、現状を改めて見つめ直した上で、急速に進む人口減少や少子高齢化を背景にした社会情勢の変動や、医師の偏在化、医療の高度化などの医療環境などを考慮し、新病院の果たすべき役割を定める必要があります。そして桐生保健医療圏における医療・健康づくりの拠点として、厳しい環境においても、持続可能な医療提供体制の確保と、安定した病院経営を実施しつつ、市民の福祉と豊かな生活に貢献して参りたいと存じます。

 令和5年5月

桐生地域医療企業団 企業長
桐生厚生総合病院 病院長
加藤広行